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事業再構築補助金獲得のために  後編

 

中小企業の経営者の方はもちろん、われわれ中小企業診断士も盛り上がっている「事業再構築補助金」解説の後編をお届けします。

 

コロナウイルス感染症で経営に影響を及ぼしている現状を打破するには、環境に順応して変革していくことが求められます。「事業再構築補助金」は、生き残るための戦略を練り、改革に挑戦する中小企業、中堅企業を応援する施策です。

 

この機会を逃さず、一歩を大きく踏み出してはいかがでしょうか。

 

 

 

3.5つの類型と各類型の要件

 

事業再構築は、「新分野展開」、「事業転換」、「業種転換」、「業態転換」、「事業再編」の5つの類型のいずれかに該当する事業計画書を策定することが必要になります。

 

5つの類型について、表に整理してみました。

 

 

 

 

類 型

定  義

要  件

新分野展開

中小企業等が主たる業種または事業を変更することなく、新たな製品・商品またはサービスを製造または提供することにより、新たな市場に進出すること

①製品等の新規性要件②市場の新規性要件③売上高10%要件

事業転換

新たな製品・商品またはサービスを製造または提供することにより、主たる業種を変更することなく、主たる事業を変更すること

①製品等の新規性要件②市場の新規性要件 ③売上高構成比要件

業種転換

新たな製品、商品またはサービスを製造または提供することにより、主たる業種を変更すること

①製品等の新規性要件②市場の新規性要件③売上高構成比要件

業態転換

製品、商品またはサービスの製造方法または提供方法を相当程度変更すること

製造方法変更の場合

①製造方法の新規性要件②製品の新規性要件 ③売上高10%要件

提供方法変更の場合

①提供方法の新規性要件②商品またはサービスの新規性要件もしくは既存設備の撤去または既存店舗の縮小等の要件 ③売上高10%要件

事業再編

会社法上の組織再編行為(合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)等を行い、新たな事業形態のもとに、新分野展開、事業転換、業種転換または業態転換のいずれかを行うこと

①製品等の新規性要件②市場の新規性要件 ③売上高10%要件

 

 

 

ちょっと複雑で分かりにくいのですが、第5項の事業再編は会社法上の組織再編行為が必要なので、1から4とは明らかに異なります。

 

残る1から4ですが、売上高構成比がもっとも高い構成比になる要件と、売上高が10%以上になる要件に分かれます。売上高構成比要件が付いている、2項の「事業転換」と、3項の「業態転換」ですが、総務省が定める日本標準産業分類大分類を「業種」中分類・小分類・細分類を「事業」と表現していると考えてください。例えば、飲食サービス業100%の会社が、売上の55%を小売業にするのが業種転換です。飲食サービス業と小売業が50%ずつだった会社が娯楽業に事業再構築して、飲食サービス業30%、小売業30%、娯楽業40%になる事業計画を作成した場合も、新事業がもっとも高い構成比になるので、これも業種転換になります。同じ飲食サービス業で、喫茶店が中華料理店を開店し、その売上が50%を超える場合は、同じ業種なので、事業転換になるということです。

 

構成比が最も高くならない場合(その場合でも、売上の10%は満たす必要があります)は、新分野展開もしくは業態転換で検討します。製品等の新規性、市場の新規性、製造方法等の新規性を勘案して、どの類型ならば満たすのかを考える必要があります。案件のスジの良さが必要なことは言うまでもありませんが、再構築を事業計画の中でどのように表現するのかも重要です。

 

 

 

4.採択率

 

現在、第2回までの採択企業が発表されていますが、採択率が気になるところです。採択率も事務局のホームページに公表されています。

 

以下の表にまとめてみました。

 

 

通常枠

緊急事態宣言

特別枠

卒業枠

グローバルV字

回復枠

第1回公募

応募件数(※1)

16,968

5,181

80

2

申請件数(※2)

14,843

4,326

69

1

採択件数

5,104

2,866

45

1

採択率

30.1

55.3

56.3

50.0

第2回公募

応募件数(※1)

14,859

5,893

48

0

申請件数(※2)

13,219

5,078

36

0

採択件数

5,388

3,924

24

0

採択率

36.3

66.6

50.0

0

 

 

 

応募件数の多い、通常枠と緊急事態宣言特別枠で比較すると、第2回公募の方が、採択件数、採択率ともに高くなっていることが分かります。また、通常枠と比較して、明らかに緊急事態宣言特別枠の採択率が高くなっています。加点項目とともに特別枠で応募することが採択の確率を高めることになりそうです。但し、特別枠は補助金額の上限が低いのでご注意ください。おかげさまで、私が支援した企業様は、第1回、第2回ともに採択されました。

 

今年度の公募は、あと2回と予測されます。事業再構築に該当しそうな企業様には、早めの準備をお勧めいたします。